神奈川県在住のKさん(68歳)は、2023年9月に「原発性マクログロブリン血症(WM)」と診断されました。最初は足の痛みから始まり、思いもよらない血液疾患の発覚へとつながりました。診断後の迷い、治療の選択、そして現在の生活について詳しく語っていただきました。長期にわたる闘病生活のなかで直面した困難や、それをどう乗り越えたのか、具体的なエピソードを交えてお話し頂きました。
まさかの診断―足の痛みから血液疾患に
- 聞き手
- 最初に異変を感じたのはいつ頃でしたか?
- Kさん
- 2023年6月頃ですね。最初は足の指の付け根に鈍い痛みを感じました。「疲れが溜まっているのかな?」と軽く考えていましたが、日を追うごとに痛みは強まっていくことを自覚していましました。
- 聞き手
- その時点で病院へ行かれたのですね?
- Kさん
- はい。最寄りの整形外科を受診しましたが、原因はわからず、大学病院の整形外科に紹介されました。痛み止めで様子を見ることになりましたが症状は改善せず、整形外科の先生から「リウマチの可能性もあるかもしれない」と言われました。リウマチ科でも診ていただいた際に、血液検査を受けたのですが、特にリウマチの兆候は見られませんでした。
しかし、数日後に血液内科から連絡があり、「詳しい検査をしたい」と言われました。血液検査の結果、IgM値が通常の24倍(2400)に跳ね上がっていることが判明し、2週間後に骨髄生検を受け、「原発性マクログロブリン血症」と診断されました。 - 聞き手
- 診断を聞いた時の気持ちはいかがでしたか?
- Kさん
- まさに「青天の霹靂」でしたね。「がんです」と告げられた瞬間、目の前が真っ白になりました。一瞬「誰が?」って思った程です。今まで、食生活にも気をつけ、不摂生もしていない、直前にはジムにも通うほど健康でしたが、話が進むうちに自分のことであることを認識しました。診察室で座っていたからよかったものの、立っていたら倒れていたかもしれません。その日は頭が混乱して何も考えられず、帰宅後もしばらく呆然としていました。
治療の選択と転院
- 聞き手
- 診断後、すぐに治療が始まったのでしょうか?
- Kさん
- はい、診断の翌月には治療を開始しました。
- 聞き手
- 治療はどのように選ばれましたか?
- Kさん
- 最初に提案されたのがBTK阻害薬でした。ちょうど、事前に血液がん専門医のYouTube動画を見ていたので、効果的な薬であることは知っていました。迷いはありましたが、医師の説明を聞いて服用を決めました。
- 聞き手
- 実際に服用してみて、効果はいかがでしたか?
- Kさん
- 期待とは裏腹にIgMの数値は下がるどころか、1ヶ月ごとに500ずつ増加していきました。副作用は少なかったのですが、IgMの数値も4000を超えるほどになり、医師と相談して一旦中止し、セカンドオピニオンを受けたいと申し出たところ、ご快諾いただき、セカンドオピニオン先の医師に、主治医から治療経緯を報告していただきました。
- 聞き手
- その後の治療方針はどう決まりましたか?
- Kさん
- セカンドオピニオンの結果、化学療法(BR療法)が推奨され、2024年2月から6クール行うことになりました。最初の1クールは入院し、その後は外来での点滴治療でした。
- 聞き手
- BR療法の副作用はいかがでしたか?
- Kさん
- メカニズムはわかりませんが、脛あたりの皮膚がただれたり、足の腫れがひどくなり、歩行が困難になりました。ただ、治療を続けるうちにIgMの数値は徐々に下がり、最終的には1200程度で安定しました。
治療中の生活と家族・同僚の支え
- 聞き手
- ご病気や治療によって、生活にどのような影響がありましたか?
- Kさん
- 治療の副作用で杖なしの歩行が難しくなりました。また治療費が想像以上にかかり、特にBTK阻害薬は高額で、高額療養費制度を利用しましたが、それでも家計への負担は大きかったです。そのため、週3日だけ仕事に復帰し、可能な範囲で収入を確保するようにしました。ただ、昨年末に義理の母が亡くなり、今は、妻と息子の三人暮らしで、妻と私は共働きで、息子ももう働いているので、当初は大変でしたが、みんなで頑張り、今は落ち着いてきた感じです。生命保険の一時金も有難かったです。
- 聞き手
- お仕事場の様子はいかがでしたか?
- Kさん
- 私の足の痛みのことなども配慮してもらい、ちょっとしたお客さんの対応など、私の立ち座りなどに気をかけてくれています。ちょっとした配慮なのですが、ありがたいことです。しかし、いちばん嬉しいのは他の人と変わらず平等に扱ってくれるところです。
現在の状況と未来への展望
- 聞き手
- 現在の体調はいかがですか?
- Kさん
- 2024年8月から経過観察に入り、月1回の通院を続けています。IgMの数値は1200程度で落ち着いていますが、寒冷凝集素症候群の影響で貧血が続いています。そのため、寒さを避ける工夫をしながら生活しています。
- 聞き手
- どのような対策をされていますか?
- Kさん
- スキーウェアのような厚着をし、特に足元を温める工夫をしています。あと、昔女子高生の間で流行ったルーズソックス、あれが私には効果的でした(笑)。また、室内では暖房と加湿器を併用して、温かい空気が水蒸気とともに足元に降りてくるよう工夫しています。寒さが直接症状に影響するため、なるべく暖かい環境を作ることを心がけています。
- 聞き手
- 闘病生活を振り返って、伝えたいことはありますか?
- Kさん
- 情報収集の大切さを実感しました。私は公的な病院が発信しているYouTube動画や論文を参考にしましたが、適切な情報を得ることで治療の選択にも自信が持てました。また、家族や職場の支えがあることで、前向きに治療に取り組めました。
- 聞き手
- 貴重なお話をありがとうございました。これからもお体に気を付けてお過ごしください。
- Kさん
- こちらこそ、ありがとうございました。