2019年4月に58歳でマントル細胞リンパ腫(MCL)のステージ4と診断されたTNさん(63歳、現在個人事業主)。自覚症状が全くない中での突然の告知から、治療、そして現在の寛解状態に至るまでの体験を語ってくれました。
病気を見つけるきっかけとなったのは、膵嚢胞の検査で偶然見つかったリンパ腺の腫れでした。医師の「よくあること」という判断に納得がいかず、自ら行動を起こしたことで、早期の治療へとつながりました。抗がん剤治療への強い抵抗感を抱きつつも、医師の言葉を信じ、前向きに闘病に臨んだTNさんの道のりを詳しくお伺いしました。
きっかけは人間ドッグ
- 聞き手
- 本日はお忙しい中、ありがとうございます。まず、最初にどのような症状を感じて、診断に至ったのか、お聞かせいただけますか?
- TNさん
- 2015年の人間ドックがきっかけでした。そのとき、心筋梗塞と膵嚢胞の疑いがあると言われ、まず心臓の検査をしましたが、こちらは異常なしと診断されました。その後、膵嚢胞の精密検査を受けたところ、偶然、リンパ腺の腫れが見つかったんです。でも、その時の担当医からは「よくあること」と言われ、自覚症状も全くなかったので、特に深く考えることはありませんでした。
- 聞き手
- そこから本格的な検査に進むまで、かなり時間がかかったようですね。
- TNさん
- そうですね。その後も毎年の健診で膵嚢胞は指摘されていましたが医師にリンパ腺が腫れているが問題ないと言われていると説明されました。しかし、3年後の2018年の検査で血便が出たので大腸内視鏡検査を受けました。そこでポリープが見つかり、病理検査の結果が「非特異性な反応性のリンパ腫の疑いあり」というレポートでした。しかし、担当の外科医はこれを「定期検診で良い」と判断したんです。
- 聞き手
- その判断に納得がいかなかったと。
- TNさん
- はい。どうしても腑に落ちず、友人に相談したところ、知り合いの医師が、「悪性リンパ腫に良性はない。すぐに専門の病院で検査した方がいい。」と助言してくれました。その言葉で、がん専門病院への紹介状を書いてもらうことにしたんです。もしこの助言がなかったら、私は治療が遅れていたかもしれません。改めて検査を受けた結果、2019年4月にマントル細胞リンパ腫のステージ4と診断されました。
医師の言葉に救われた
- 聞き手
- 診断を受けた時のお気持ちはいかがでしたか?
- TNさん
- 正直、抗がん剤に対して強い抵抗感がありました。父が膵臓がんで抗がん剤治療中に突然余命2ヶ月を宣告された経験があったので、抗がん剤は怖いというイメージがあったんです。でも、自分で病気について調べるうちに、「悪性リンパ腫は抗がん剤が効く」という情報を知り、少し希望が見えました。それでも、抗がん剤以外の治療法がないか模索しましたが、最終的に担当医から「治療しなければ腸が破裂する」と告げられ、治療を受け入れる決意を固めました。
- 聞き手
- 担当医の先生とは、どのようなお話をされましたか?
- TNさん
- 先生からは「治るが再発性が高い病気」という説明を受け、不安を正直にぶつけました。「再発したらどうなるんですか?」と聞くと、先生は「その時はまた考えましょう」と楽観的に言ってくれたんです。その言葉に、私はとても救われました。先生を信頼し、説明された治療法をしっかり納得して、病気と向き合ってきました。
入院生活
- 聞き手
- 入院生活はどのようなものでしたか?
- TNさん
- 2019年5月にR-CHOP療法のために入院しました。最初の一週間は吐き気で全く食事がとれず、食器を見るだけでも気分が悪くなるほどでした。でも、相部屋の患者さんたちが「しんどかったら躊躇せずナースコールを押していい」と声をかけてくれたんです。その言葉に救われましたし、孤独な闘病生活に光が差しました。
- 聞き手
- ご自身で何か工夫されたことはありますか?
- TNさん
- 私は入院中、自分を「優良患者風」と称して、看護師さんの名前や出身地をノートに記録し、常に笑顔で接するように心がけました。そうすることで、看護師さんとのコミュニケーションが円滑になり、些細なことでも相談しやすくなりました。また、入院生活を快適に過ごすために、延長コードや調味料セットを用意したり、色々と工夫しました。
- 聞き手
- お仕事への影響も大きかったのではないでしょうか?
- TNさん
- はい。入院中も仕事のメールのやり取りは続けていました。幸いにも、勤務していた会社ががん患者に協力的だったので、給料も問題なく支払われ、経済的な不安は軽減されました。ただ、過去にがん保険を解約していたので、差額ベッド代などの自己負担が大きくなったのは痛かったです。
寛解、自分らしく日々を大切に
- 聞き手
- 抗がん剤治療後は、いかがでしたか?
- TNさん
- 治療効果は高く、おかげさまで寛解状態となりました。入院中も常に足腰が弱らないように院内を歩き回るなど、リハビリに努めました。治療終了して退院してから2ヶ月後には、好きな山登りに復帰することもできました。息切れはしましたが、以前楽しんでいたことができる喜びを感じました。
- 聞き手
- 現在の生活や、再発への思いについてお聞かせください。
- TNさん
- 現在は3ヶ月に1度の血液検査と半年に1度のCT検査で経過を観察しています。再発への不安はありますが、「明日死んでも後悔しない」という覚悟を持ち、日々を前向きに過ごしています。病気を経験したことで、人生観が変わり、今を大切に生きようという気持ちが強くなりました。