神奈川県在住のSIさん(72歳)は、2014年10月に「マントル細胞リンパ腫」と診断されました。始まりは、喉と耳の痛み、そして体重減少という、一見すると風邪のような症状でした。11年間にわたる闘病生活の中で、強力な抗がん剤治療と造血幹細胞移植、そして再発と新たな治療を経験しました。
病気を「医師と薬でしか治せない」と語るSIさんは、医師を深く信頼し、前向きに病と向き合ってこられました。今回は、長期にわたる闘病生活で直面した困難や、それをどう乗り越えたのか、その道のりを詳しく語っていただきました。
診断は喉の痛みから始まった
- 聞き手
- 本日はありがとうございます。まず、最初にどのような症状を感じて、診断に至ったのか、お聞かせいただけますか?
- SIさん
- 2014年6月頃、少し前から右側の耳と喉が痛くて、近所の総合病院の耳鼻咽喉科にかかりました。最初は通常の扁桃腺が腫れている病気だろうと診断され、痛み止めの薬をもらいました。そのお薬で痛みは治まるんですが、違和感が取れなくて、2、3ヶ月ほど通院を繰り返していました。
- 聞き手
- なかなか症状が良くならなかったのですね。
- SIさん
- はい。あるとき、若い女性の先生に「年齢も年齢なので悪性ではないか」と質問したのですが、「悪性ではないから心配無用」と断言されました。ただ、顎周辺のリンパ節の腫れが引かず、痛みも引かない状態が続きました。2ヶ月ぐらい経つと、体重が6キロほど減っていたので、さすがにただ事ではないと思い、ベテランの先生に診てもらうようお願いしました。
- 聞き手
- そこでリンパ腫の可能性が浮上したのですね。
- SIさん
- そうです。ベテランの先生に診てもらったら「怪しい」と。「リンパ腺が腫れているので、悪性リンパ腫の疑いがある」と言われ、すぐに市内で一番規模の大きな病院を紹介されました。そこで血液検査やPET-CT、そして2回にわたる生検検査を経て、「マントル細胞リンパ腫」という確定診断を受けました。
医師への信頼が治療選択の決め手
- 聞き手
- マントル細胞リンパ腫と診断された時、先生からはどのような説明がありましたか?
- SIさん
- 先生からは「非常に珍しい病気」で、「強力な治療が必要」だと説明されました。治療法にはいくつか選択肢がある中で、当時60代前半だった私には体力があるだろうということで、「完治はしないが寛解は目指せる」という判断のもと、強力な化学療法を勧められました。私はそれに納得し、治療を開始しました。
- 聞き手
- 治療法について、ご自身でインターネットなどで調べたりはしなかったのですか?
- SIさん
- 当時、私は病気や薬のことなど全く知らず、元気で働いてきたので、医療機関のことも全然わかりませんでした。住んでいる地域の周りの医療機関が、どこがいいのかも分からず、初めての大病でしたので、医師を頼るしかないと考えていました。幸い、紹介された病院には経験豊富な先生がいるだろうと信頼しました。先生は人間的に話をしてくれる方で、「わからないことがあったら何でも聞きなさい。自分で納得して、そしたら治療を一緒にやりましょう」と言ってくれたので、この先生なら大丈夫だとお任せすることにしました。
- 聞き手
- では、治療法に関する情報収集はどのようにされましたか?
- SIさん
- 先生から治療薬の冊子を渡されて、それで病気のことを学びました。インターネットで調べることはありませんでしたし、家族も口出しすることもありませんでした。先生を信頼し、説明された治療法をしっかり納得して、病気と向き合ってきました。
再発と分子標的薬での治療
- 聞き手
- 最初の治療で寛解を得られたとのことですが、再発した時のお気持ちはどうでしたか?
- SIさん
- 最初の治療を始める時に、先生から「完治はしないが、寛解は目指せる」という説明を受けていましたし、細胞が少しでも残っていると再発する可能性があるということも聞いていたので、再発した時は「やっぱり来たか」という気持ちでした。最初の治療で一度寛解宣言をもらった時は「よかった」とホッとしたのですが、約5年後に再発してしまいました。
- 聞き手
- 再発後の治療はどのようなものになりましたか?
- SIさん
- 再発後は分子標的薬の経口薬治療を選択しました。飲み薬なので体への負担も少ないだろうと思っていたのですが、副作用として末梢神経障害を発症しました。手足のしびれや痙攣、こむら返りなどの症状が出て、原因を調べるために脳神経内科に入院もしました。結局、過去の治療薬の副作用だったと診断され、別の薬を服用して回復に向かいました。
いまも病気と向き合い続けて
- 聞き手
- 現在も治療は継続中ですか?
- SIさん
- はい。2024年4月に一度寛解宣言をいただき、分子標的薬も減量して服用を続けています。しかし、2025年1月頃に再び痙攣やこむら返りが発症し、薬を服用しています。さらに、昨年には高血糖で10日ほど入院もしました。そして、2025年6月から新しい治療として、抗がん剤と分子標的薬の点滴を再開することになりました。
- 聞き手
- 長期にわたる闘病生活の中で、医療費についても色々と感じられることがあるかと思います。
- SIさん
- 高額療養費制度があるおかげで助かっていますが、それでも「1カプセル1万円」といった高価な薬の費用には驚きました。この金額は一般市民には服用できないのではないかと感じることがあります。しかし、病気は医師と薬でしか治せないという思いは変わりません。
- 聞き手
- ありがとうございます。最後に、SIさんにとって、この病気との付き合いはどのようなものですか?
- SIさん
- 病気になってから11年が経ちますが、この病気は自分にとって、医師や薬の進歩を実感する機会になっています。最新の薬や治療法にアクセスできていることに感謝しています。これからも医師を信頼し、病気と向き合っていきたいです。