大阪在住のSTさん(62歳・無職)は、マントル細胞リンパ腫という稀な血液がんの診断に怒り戸惑いながらも、病気や治療について徹底的に調べ、医師と相談しながら納得のいく治療を選択してきました。自閉症の息子のためにも早く治したい、という気持ちが強く自分で調べ、自分で動き、「戦う」心意気で治療と向き合ってこられたお話を伺いました。
同僚看護師の助言が診断に繋がった
- 聞き手
- 本日は貴重なお時間をありがとうございます。さっそくですが、STさんの病気がわかった経緯についてお聞かせいただけますか?
- STさん
- 2023年の1月頃に、左の背中が痛くて近所の病院でレントゲンを撮ってもらったんですが、異常はないと言われました。それから痛み止めでごまかしていたのですが、同年6月頃から脾臓が腫れていることに気づきました。職場(介護施設)の看護師が元血液内科だったのですが、「脾臓が腫れているのはおかしい」と言われたのをきっかけに、8月に病院に行きました。
- 聞き手
- そこから、専門的な検査に進んだのですね。
- STさん
- はい。最初に消化器内科で造影CTを撮ったところ、悪性リンパ腫の疑いがあるということで、血液内科がある公立の病院を紹介されました。そこからはもう検査づくめでしたね。血液検査、マルク(骨髄穿刺)、PET検査を別の病院で受けて、最終的に9月に入ってから鼠蹊部を切ってリンパ生検をしました。
- 聞き手
- 生検の結果、マントル細胞リンパ腫だと診断された時のお気持ちはいかがでしたか?
- STさん
- 「なんでこんな病気になったんやろう」って思いましたね、うちはがんの家系なので、婦人科系とか肝臓のがんだったら、と心配していましたが、血液のがんは頭になかったんです。悲しむとかではなく、なんだかすごく腹が立ちました。また難儀な病気になったな、って。
- 聞き手
- 診断が確定するまでの間に、ご自身でも病気のことを調べられたそうですね。
- STさん
- はい。看護師さんから話を聞いて、自分でもネットで調べました。悪性リンパ腫から調べて、種類がたくさんあることもわかったり。症状が全く出ていなかったので、脾臓だけが腫れているという状況で、これはリンパ腫じゃないかな、とほぼ確信していましたね。
自らの意思で決めた治療方針
- 聞き手
- 先生から治療方針はどのように説明されましたか?
- STさん
- 先生は、マントル細胞リンパ腫は稀な病気で完治が難しいと説明してくれました。治療法はR-CHOPとR-DHAPを交代で6クール行う化学療法で、その後、地固めとして自家末梢血幹細胞移植を勧められました。最終的なゴールは、移植と分子標的薬での維持療法を2、3年続けることだと。
- 聞き手
- STさんは、先生から提示された治療方針に、すぐに納得されたのですか?
- STさん
- 抗がん剤には抵抗がありましたけど、血液のがんは化学療法しかないって自分で調べてわかっていたので、やるしかないな、という気持ちでした。でも、自家移植は最初からしないと決めていました。
- 聞き手
- なぜ移植をしないという決断をされたのでしょうか?
- STさん
- 移植は大量の抗がん剤を投与しないといけないし、リスクが高いと思ったんです。100%治るならやってもいいけど、先生が「80%」って言ったので、それならやる意味がないと思いました。それに、抗がん剤で体力が落ちた状態で、すぐに移植というのも疑問に感じました。
- 聞き手
- ご自身の意思を先生にはっきりとお伝えされたのですね。
- STさん
- はい。「私にとってメリットはない」と伝えました。もし再発しても後悔はないし、またその時に考えるからと。先生は「いつも自分で治療を決めて偉いな」と言ってくれて、私の意思を尊重してくれましたね。
「戦う」姿勢で臨んだ入院と生活
- 聞き手
- 抗がん剤治療が始まった時の心境は?
- STさん
- 落ち込むことはなかったですね。「戦う」という気持ちしかなかったです。そのために副作用も全部調べて、入院中も自分で準備できることは全部やりました。
- 聞き手
- 入院中に特に困ったことはありましたか?
- STさん
- 病院食を受け付けなかったことですね。味が薄くておいしくなくて。食欲はあったので、自分でコンビニに買いに行ったり、梅干しを持っていったりしました。
- 聞き手
- ご家庭のことで心配だったことは?
- STさん
- 自閉症の息子が心配で、入院中はグループホームに預ける手続きを急いでやりました。主人はまったく頼りにならないので・・。会社のことも、傷病手当金とか高額療養費制度とか、全部自分で調べて手続きしました。
- 聞き手
- 本当にご自身でなんでも調べて、動かれていて素晴らしいですね。
- STさん
- 「私しかいないからしょうがない」という気持ちでしたね。息子のためにも早く治さないと、という気持ちが一番強かったので。
- 聞き手
- 治療中の体調面はいかがでしたか?副作用などで辛かったことは?
- STさん
- 幸い、吐き気や熱は全く出なかったですね。脱毛は仕方なかったですが、口の中の味覚障害が嫌だなと思ったくらいです。若い担当医が「絶対熱が出る」と断言されてたんですが、全く出なかったので、先生もびっくりしていました。
寛解、そして穏やかな日々へ
- 聞き手
- 現在は分子標的薬による維持療法中とのことですが、お気持ちに変化はありましたか?
- STさん
- あんまり変わりはないですね。ただ、外来での点滴に5、6時間かかるのが毎回大変だな、というくらいです。分子標的薬は副作用もほとんどないですし、心境的にはまったく変わらないですね。
- 聞き手
- 体調面はいかがですか?
- STさん
- まったく問題ないですね。今は2ヶ月に1回の通院をしながら、穏やかに過ごしています。
- 聞き手
- 今後、再発した時のことについて、不安に思うことはありますか?
- STさん
- 再発に怯えていても仕方がないと思っています。もし再発したら、次は違う抗がん剤になるだろうなと自分でも調べているので。その時はまた自分で詳しく調べて、納得した上で治療を決めたいです。ただ、もし再発したとしても、移植は選ばないと思います。
- 聞き手
- 最後に、同じ病気と向き合う方々へメッセージをお願いします。
- STさん
- 病気に勝つためには、メンタルが大事です。結局はポジティブじゃないと勝てませんから。自分の身体のことなので、お医者さん任せにするのではなく、自分で調べて、納得して治療に臨むことが大切だと思います。